鏡に映った猿
1883年(明治16)11月28日、二階建ての洋式建築「鹿鳴館」の完成式が行われた。
今、読んでいる「明治天皇 下巻」(ドナルド・キーン著、新潮社版)でキーンは次のように書いている。“恐らく鹿鳴館で踊っていた人々の多くは、自分たちの高価な衣装や舞踏の腕前を見せる以上のことは考えていなかったろう。・・・(略)・・・日本人は、かくもヨーロッパ文化(舞踏会のこと)の水準の高みまで達した。だから、日本は対等に扱われるべきである、と。井上(馨、外務卿)の最終的な目標は、治外法権の撤廃にあった。”
残念ながら井上の思いは通じなかったようだ。
外国人の目に映った鹿鳴館の日本人の姿は、フランスの画家ジョルジュ・ビゴーの風刺漫画「紳士と淑女が社交界にお目見え」(リンク先の3番目の絵)に描かれている。
“高価な外国の衣装に身をつつんだ日本人男女の風采は面白く、また滑稽だった。鏡の前に立っている一組の男女、鏡に映っている姿は猿だった。”
このビゴーの来日時は、まだ日本の銭湯は混浴だった。かれは東京中の銭湯をハシゴしたという。これがホントなら、文化の違いをいいことにスケベ-丸出しで東京を楽しんでいたわけだ。湯船で顔だけ出して楽しんでいる自分の姿を残してもらいたかったネ。
明治の政治家の涙ぐましい努力はしっかりと受け止めたい。
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