それぞれの老いの彼方は不透明
2007年ノーベル文学賞を受賞したドリス・レッシング(1919~2013年)の力作
「夕映えの道 よき隣人の日記」(篠田綾子訳、集英社版)を読んだ。
今年読んだ中で、最高に心に残った本だと確実に言えそうだ。
(「生きに入りの本」参照)
訳者あとがきによると、本書の原題は「よき隣人の日記」だという。
「よき隣人」には2つの意味がある。
1つ目は、「汝の隣人を愛せよ」という本来のキリスト教の精神、
2つ目は、英国のボランティア組織(Good Neighbours)、1970年代に発達し、市
町村組織の公的バックを受けた、老人・病院の介護支援組織で奉仕
はボランティアが行う。
1つ目は、「汝の隣人を愛せよ」という本来のキリスト教の精神、
2つ目は、英国のボランティア組織(Good Neighbours)、1970年代に発達し、市
町村組織の公的バックを受けた、老人・病院の介護支援組織で奉仕
はボランティアが行う。
本書は・・
数年前に、夫と母を癌で亡くし、ひとりぼっちになった高級女性誌の有能な副編
集長ジャンナ、偶然のなりゆきから貧しい90歳過ぎいの老女モーディと付き合うよ
うになった。2人がお互いに反発し合いながら愛情で結ばれていく物語だ。
集長ジャンナ、偶然のなりゆきから貧しい90歳過ぎいの老女モーディと付き合うよ
うになった。2人がお互いに反発し合いながら愛情で結ばれていく物語だ。
所々に、英国の階級社会が顔を出す。ジェンナはやり場のない憤激に怒り狂う。
周囲はジャンナを「良き隣人」の一員として認めない。階級の違う者の間に友情な
周囲はジャンナを「良き隣人」の一員として認めない。階級の違う者の間に友情な
ど成立するはずがない、と決め込んでいるからだ。
また、英国社会を構成する外国人問題も絵が描かれている。
本書は、単なる世代間交流の物語ではない。ある面では英国の根強い社会問題
を扱った社会派小説と言えるかも知れない。
を扱った社会派小説と言えるかも知れない。
日々、体が不自由なっていくモーディを見て、ジャンナのひと言が印象的だった。
“ーなんという特権、なんとすばらしく貴重なことか、今日1日誰の助けも借りず、
全部自分でやれることは、と”
全部自分でやれることは、と”
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